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アメリアで増える中高年のネットユーザー:変容するECサイト利用者層

Anna Thompson
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old man typing on laptop

ネット通販は、若者世代の独壇場。あなたはそう思っていませんか? ところが、パンデミックのさなかに、ネット通販の利便性に新たに気付いた層があります。それは、「シルバーサーファー」と呼ばれる中高齢世代のネットユーザー層です。じつはこの動きは、新規の顧客獲得を狙いたいEコマース企業にとって大きなビジネスチャンスです。

ミレニアル世代や、TikTokに夢中になっているZ世代のことは、ひとまず置いておき、それよりはるかに年齢層の高いベビーブーマー世代に、視線をシフトしましょう。何しろこのユーザー層には、娯楽にかける潤沢な可処分所得があるのですから。ではここからは、目下のところ急成長を見せている、この収益性の高い新たな市場に参入する方法について解説していきます。

パンデミックが、結果的にEコマースの市場を大きく押し広げたことは、周知の事実です。もちろんそれ以前にも、ネット通販はすでに活発に行われていました。しかし、2020年のEコマースが記録した急速な成長率は、じつに目を見張るものがありました。多くの実店舗が閉鎖に追い込まれたことで、それまであまり熱心でなかった人たちも、必要に迫らる形でネット通販を利用する流れが生まれました。そして今では、多くの人々がネットショップの利便性の高さを身をもって実感しています。この消費の習慣は、今後も社会に定着していく可能性が高いと言えます。

しかし、あらためて考えてみると、今ここで話題にしているネット購入者層とは、具体的にはいったい誰でしょう? それ以前には、どこに隠れていたのでしょうか?答えは、ベビーブーマーたちです。ここではあえて、「シルバーサーファー」という、もう少しクールな名前で彼らを呼ぶことにしましょう。その前に、「ベビーブーマー」という言葉を押さえておきましょう。ベビーブーマーとは、第二次世界大戦後のベビーブームの最中、1946年から1964年にかけて生まれた人々と、一般には定義されています。今現在、実年齢で言うと57歳から75歳の間にあたる人々です。  

NPDグループのデータによると1、現在、すべてのネット購入者の中で、最も急速に成長している人口グループは、65歳以上の消費者層です。この層が2020年にオンライン上で支出した金額は、前年比で 49% 増、オンラインショッピングを利用する頻度も、40% の急増を記録しました2。2020年1月から10月までの平均で、この層の消費者は、オンラインショッピングに毎月 1,615 米ドルを支出しました。

これだけを見ても、新たな販売機会を切実に求めているEC小売業者にとっては、非常に興味深い数字です。ただしここでの問題は、パンデミックの完全終息後に (このまま終わって欲しいものです)、その後も引き続き、この傾向が続くかどうかです。高齢者は、新型コロナの重症化リスクが最も高い層です。そのため多くの高齢者が、自分の身を守るために外出を控えて自宅に留まっています。果たしてコロナ終息後には、その人たちはネット通販での購入を放棄し、また以前のように実店舗での買い物に戻るのでしょうか?最近実施された消費者調査によると、ベビーブーマー世代の半数近く (47%) が、パンデミック後にもネット通販での利用を増やす意向を持っています3。この調査結果をふまえて、この世代のオンライン行動を、さらに掘り下げて見て行きましょう。そしてそこから導き出される今後のトレンド予測を、ぜひ、あなたのビジネスに役立ててください。

smiling old lady trying on a top

彼らはネット通販で、何を買っているのか?

パンデミック期間中、オンラインショッピングを利用して日常の必需品を買うトレンドが、シルバーサーファーの間に浸透し、深く定着しました。具体的には、フードデリバリー、食料品、清掃用品、個人向けの衛生用品など。シルバーサーファーは、これらの商品に多くの支出を行っています。なお、この傾向は、それ以外の世代の人口グループでも同様に見られます。しかし実は、日常の必需品以外の購入も増加していました。The Economist4 が実施した国際調査では、2020年1月~3月期と比較して、2020年6月~8月期にオンライン支出のシェアが最も大きく増加した製品カテゴリが何か、世代別のコホート分析を行いました。その結果、ベビーブーマー世代では、本、玩具、ゲームが 23 パーセントポイント (pp) 増加していました。さらには 靴、衣類、アクセサリーが 21pp の増加、家電製品・電気機器が 17pp の増加となっています。  

ベビーブーマー世代は、最も裕福な世代グループであるにもかかわらず (アメリカでは、国内すべての可処分所得のうち、なんと 70% をこの世代が保持しています5)、商品の価格に非常に敏感です。この調査の対象となったベビーブーマー世代のうち 42% が、越境ECで購入する際に最も重視するのはリーズナブルな値段と答えました。それより若い世代層では、同じ回答をした割合は 32% にとどまっています6。 したがってこの調査結果を考慮し、中高年層の消費者を惹きつけるにはどのような割引オファーや送料を設定すべきか検討することが重要となります。 

 

十分な研究

たしかにシルバーサーファーの支出額や消費習慣には、わかりやすい傾向があります。しかし、このグループをターゲットに商品を販売する際は、「画一的な」戦略は避ける方が賢明です。現在のベビーブーマー世代は、「離婚(そしてその一部は再婚も)」「子育てを終えた」「転職」「祖父母になる」など、それぞれ独自の、じつに様々なライフイベントを経験してきた人々です。

したがって、ただ単に年齢が近いことを理由にこの世代をひとくくりに扱うのは、あまりにも早計です。オンラインショッピングにおける彼らのニーズ、消費習慣、購入動機に関しては、非常に幅広いものがあります。ですから、他のすべての顧客層と同様に、まずはトライアルをして、そこから得られるフィードバックにしっかりと目を向け、そのうちの何が効果的で何が効果的でないのかを、あなた自身で確認する必要があります。きちんとリサーチを行い、シルバーサーファー世代の消費者ニーズに対応しきれていない、現行市場のミスマッチを見つけ出し、そのニーズを満たすために製品ラインナップを多様化、あるいは拡大させましょう。

また、中高年世代の消費者が、それまで長年慣れ親しんだブランドに対して高いロイヤルティ (愛着) を示す傾向があることも、しっかり頭に入れる必要があります。彼らの長年のこだわりを崩して商品を買ってもらうためには、あなたのブランドのUSP (独自の強み) をしっかりと意識し、それをベースにマーケティング戦略を構築する必要があります。ではここからは、あなたのECビジネスにおいてシルバーサーファーをターゲットに定める際にぜひとも押さえておくべき、その他の重要ポイントを見ていきましょう。

機能性について

シルバーサーファーの多くは、オンラインショッピングに不慣れです。ですから、Eコマースのウェブサイトを適切にカスタマイズし、シルバーサーファーのカスタマーエクスペリエンスに特化した最適なアプローチを検討する必要があります。ECサイトのナビゲーションはシンプルでユーザーフレンドリーであること。まずはこれらを押さえた上で、必要に応じて、サイトの訪問者がテキスト表示サイズを拡大できる機能を加えましょう。ハウツーガイドとチュートリアルビデオは、優れたユーザーエクスペリエンスをもたらす有効な追加機能です。  

オンラインショッピングに不慣れな人は、商品検索やページの閲覧がしやすい、機能的なオンラインマーケットプレイスに自然と惹きつけられるものです。DHLが独自にまとめた主要マーケットプレイスガイド(英語のみ)を参照し、マーケットプレイスの活用がもたらすビジネス上のメリットを学びましょう。

 

信頼性について

日常のあらゆる側面を、SNSなどで他人と共有することに抵抗のない若いデジタルネイティブ世代とは異なり、シルバーサーファー世代にとって、オンラインのセキュリティは切実な問題です。実際に行われた調査によると、高齢世代にとっては、オンラインの銀行取引やオンラインショッピングなどのサービスを利用する上で大きな抵抗要因となっているのは、セキュリティリスクと個人情報リスクへの不安です7。この不安を解消するため、個人情報の取り扱いに関する方針を定めて透明性をしっかり確保し、ウェブサイトにおけるセキュリティの向上を図ることが必要です。また、安心感を持って利用してもらえるよう、クレジットカード情報などの個人情報を扱う際に講じているセキュリティ保護の概要を、わかりやすくウェブサイトに表示しましょう。また、たとえば PayPal8など、世間的に名の知れた信頼できるプラットフォームを通じた支払うオプションを顧客に提供することで、コンバージョン数を増やすことができます。  

hands holding a tablet

支払いについて

オンラインでの支払い方法の好みは、世代ごとに異なります。一般的にネット購入者は、自分の希望する支払い方法がオプションの中に入っていれば、 70% の割合でオンライン購入を行います。ですからオンラインでの決済時に、消費者に提供できる支払いサービスの種類が多ければ多いほど好ましいと言えます9。ただしそうは言っても、世代による好みの違いは確かにあります。ベビーブーマー世代は、クレジットカードとデビットカードを使ったショッピングが最も快適だと感じており、全世界の 57 ~ 75 歳世代の購入者の 65% が、越境ECでの購入に際して、そのどちらかのカード (または両方) を使用しています。これとは対照的に、「buy now, pay late (現金・カード不要の後払い)」の支払いオプションを利用した経験がある人は、ベビーブーマー世代のわずか 3% に過ぎません10。おそらくこれは、この世代が経済的に余裕があることの裏付けとも言えるでしょう。
 

カスタマーサービス

カスタマーサービスは、どの世代の顧客をターゲットとする場合でも、ビジネスの最重要部分です。調査によると、ベビーブーマー世代は、カスタマーエクスペリエンスが平均以下のクオリティであった場合に購入を中止する可能性が最も高い世代だというデータが出ています10。彼らはまた、AIを活用したチャットボットよりも、旧来型の対人コミュニケーションを好みます。具体的には、ベビーブーマー世代の 70% が、チャットボットなどのセルフサービス型の自動化ツールよりも、スタッフとの対話が好ましいと感じています (ミレニアル世代では、この割合は 54% にまで下がります) 11。したがって、カスタマーサービスのエージェントに投資する、ないしは、2つの異なるアプローチを併用することが有効でしょう。たとえば、自動化されたライブチャットのインタラクション機能に、「スタッフと話す」のオプションも選べるシンプルなボタンを追加するだけでも、顧客は満足してくれる可能性があります。もしもこのレベルのサービスを確保することが予算的に厳しい場合には、次善の策として、あたたかみのある魅力的な言葉遣いができる自動化されたカスタマーサービスを導入し、顧客対応に「人間味」を加えることも一案です。

man holding mobile phone

フルフィルメントについて

顧客のエクスペリエンスは、「購入ボタンをクリックしたら、それで終わり」ではありません。顧客を満足させ、リピーターとして定着してもらう上で、その後の配達のステップがきわめて重要です。

全米小売業協会 (National Retail Federation) の調査では12、ベビーブーマー世代は送料無料を最も重視しており、実に 88% が、ECサイトに対して送料無料サービスを期待しているという結果が出ています。その割合は、X世代では 77%、ミレニアル世代では 61%、Z世代では 76% でした。したがって、オンラインショッピングの精算時に送料無料のオプションを提供することは、あなたのビジネスにとって非常に価値のある投資となるかもしれません。

オンラインショッピングのプロセスに不慣れなベビーブーマー世代は、配送プロセス全体の透明性が確保されていることを高く評価する傾向があります。ですから、商品の配送状況を確認できる追跡機能や通知サービスの提供は必須条件と言えるでしょう。この部分を保証することで、この世代の消費者を、ロイヤルカスタマーに変えることができます。 

多くの中高齢者層は、今でもなお、新型コロナに対する予防や自己防衛に熱心に取り組んでいます。この衛生上の観点も、しっかり考慮する必要があるでしょう。もし、実店舗を運営している場合には、そこでのBOPIS (オンラインで購入、店頭で受け取り) のオプションは、この世代から高く支持されるでしょう。また、宅配受け取りロッカーを取り入れるのも有効なアプローチです。これによって消費者が抱く衛生上の不安が解消できると同時に、購入者の予定に合わせて注文商品を受け取れるメリットも生まれます。パックステーションのオプションがあることによって、カスタマーエクスペリエンスは向上し、新たな顧客獲得につながる非常にポジティブなメッセージとなることは間違いありません。

 

old lady smiling in front of phone

SNSの活用

ソーシャルメディアは若者向けのものだという先入観は捨てましょう。たとえばアメリカでは、ベビーブーマー世代の 86% が毎日ソーシャルメディアを利用しているというデータがあります13。ですから当然、ソーシャルメディア戦略についても考えておく必要があります。

ソーシャルメディア・プラットフォームには、年齢によるターゲティングがしやすいという利点があります。シルバーサーファー層にフォーカスする際にも、非常に役立つツールです。パンデミック期間中に予算の縮小が行われた結果、Facebook と Twitter の広告料は、今現在、割安になっています。有利なCPM(Cost per Mille=広告を1,000回表示させるのにかかる費用)で広告展開用を考えるには、今が絶好の時期です。

購入を促す広告には、ベビーブーマー世代に特化したリンク先ページを貼るなど、この世代向けのしっかりとしたカスタマイズが必要です。実際に、CTA(Call to Action=行動喚起)、割引、クーポンなど、異なる複数のアプローチをテストしてみましょう。そしてその市場で最も効果的なアプローチは何か、実践の中から理解を深めましょう。そこから得られた知見は、将来的な利益を生み出す貴重な学習情報となります。

これから先、新型コロナが終息した後の、ポストパンデミックに移行していく中で浮かび上がってくる、ひとつの大きな問いがあります。それは何かといえば、パンデミック中にオンラインショッピングのデビューを果たした消費者層が、世界各地で実店舗が再開した後にも、引き続きオンラインショッピング利用を続けるのかという問題です。ここでは、この期間中に獲得した新規顧客を、リターゲティングしていかに引き留めていくかが重要になるでしょう。今後も続けてお客様にコンタクトを取り続け、特別セールや割引オファーの情報を送信し、長く継続的にサービス利用をしてもらえるよう働きかけましょう。