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MOBVOI(モブボイ)の挑戦:立ち上げから世界展開まで

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Mobvoi(モブボイ)のJason Zheng氏に、ブランドが世界的認知を獲得するまでの道のりと、その品質保証にDHLがどのように貢献しているのか、話を伺いました。

取材時、Mobvoiは設立から6年のスタートアップ企業でした。「Mobvoiは、AI音声認識技術とソフトウェアの製造企業としてスタートしました。設立当初は、中国語のみに対応したアプリを取り扱っており、その後、B2Bビジネスや企業向けの製品など、取り扱う製品の幅を拡大し、現在に至ります。2016年TicWatch 2 が、中国以外のマーケットで展開される最初の製品となり、Kickstarter(クラウドファンディング)でお披露目されました。その後、「ヒューマン マシン インタラクション」という当社のビジョンが評価され、AIウェアラブル製品に関してはGoogle社から、AI (HMI) 搭載自動車に関してはVolkswagen (フォルクスワーゲン) 社からの戦略的投資を受けるに至りました」 

Mobvoiは、現CEOのZhifei Li氏によって設立。Li氏は、AI研究の世界的権威であるアメリカのジョンズ・ホプキンス大学にて、言語関連AIの分野で博士号を取得しキャリアをスタートしました。その後、Google社のリサーチサイエンティストとして、カリフォルニア州マウンテンビューでGoogle翻訳プロジェクトに従事し、その後、中国に戻ってMobvoiを立ち上げました。

このサクセスストーリーは、そのすべてはシンプルで巨大なアイデアに支えられています。「私たちのミッションステートメントは、一言で要約するなら『AI技術を通じて、次世代のヒューマン マシン インタラクションを定義する』ということです。これは私たちが音声ベースのAI技術を未来のデバイスの主要な制御方法としてどのように考えているかに関係しています」

世界展開には、細心の注意が必要になる

Jason氏は、あらゆる細部まで正確に仕上げることに強いこだわりをもっています。「PRからロジスティクス、そしてアフターサービスに至るまでのサイクルにおいて、DHLは重要な役割を果たしています。もし顧客体験の一連の流れの中でどこかに支障をきたせば、顧客からの苦情が殺到する結果を招いてしまいます。そのミスが製造上によるものなのか、企業側によるものなのか、あるいは輸送時に発生したものなのかは消費者にとっては問題ではありません。単に消費者が気にするのは、製品が届かなかったこと、あるいは製品が正しく出荷されなかったこと、ただそこだけしか気にしません。だからこそ私は、細部まで注意を払うのです。商品の配送はそれまで築き上げたきたブランドをすべて台無しになってしまう恐れもあるわけですから」

クラウドファンディングは広告にもなり得る

出資のターゲットが購入者となる場合もあります。「クラウドファンディングは大きな支えになりました。出資者たちは非常にポジティブなマインドを持った人たちで、この分野をリードする存在になりたいと考えています。『私はこの技術に精通しており、まだ誰も想像したこともないような製品も持っている』という具合に。それは次のニッチな分野を見つける、私たちを成長させてくれる次の人たちを見つける方法を知っている、という単純な話です。私たちは幸運にも戦略的投資を受けることができたので、その投資によって急成長を遂げつつあります。次のステップは、私たちが戦える市場を見つけ、そこで消費者に魅力あるストーリーを伝えられるかどうか。そこが重要な部分です」  

いかにして参入するのか

Mobvoiのチームは、ただ単に優れた製品を作っているだけではありません。莫大なマーケティング予算をかけることなく、事業を成功させたいと考えています。「クラウドファンディングで資金を集めていた段階から、今や世界で最も売れているスマートウォッチのひとつになりました。私たちが参入したとき、まさにスマートウォッチ市場の最初のブームになりつつありました。しかし多くのメーカーが参入しては、すぐに消えていきました。そこで当社が生き残れたのですから本当に素晴らしいことだと思います。生き残れた理由のひとつは、私たちが人と人とのつながりを作り、そのつながりを保ちつつ次に進んでいけるテクノロジー、それを人々にもたらしているからです」  
 

テクノロジーの利用を減らす技術

Jason氏は、Mobvoiのブランドプロミス「Be connected. Be present」の実現に情熱を注いでいます。「当社が開発する製品は、単なる情報提供手段ではありません。当社の製品を使うことで、スマートフォンや中毒性のあるアプリを使わないようにする手助けをすることです」と語ります。では、どのように実現するのでしょうか?「例えば、オーディオコントロール機能の多くを TicPods Freeのイヤホンに直接組み込みました。また、ソーシャルインタラクションでの主なデバイスは、スマートフォンではなくTicWatch がふさわしいと私たちは信じて疑いません。  通勤中ではイヤホンであるべきです。私たちは、スマートホームスピーカーも製造しています。つまりスマートフォンを取り出すことなく、直接そのデバイスに話しかけるだけでスマートホームをコントロールすることができます」

 

Man with Mobvoi wireless earphones

私たちのスマートフォンとの関係は、改善できる可能性があります。私たちは技術が提供できるものを常に求める一方、それを受け取る方法は改善する余地があります。人々がスマートフォンを見つめながら歩いたり、社交の場でスマートフォンに集中している姿は、人と機械の相互作用のコントロールを失ってしまった例です。Mobvoiは、人間が相互作用のコントロールを取り戻すため最先端技術を提供しています。「もちろん、中国のすべての人が、常にスマートフォンに熱中しているわけではありませんが、家族との夕食のテーブルでもスマートホンを触っている姿を目にしたら、おそらくアメリカやイギリスの消費者は目を丸くするでしょう。公園で他の親が子供たちと遊ぶかわりにスマートフォンを操作する姿を見た時、私たちはあらためて、主要デバイスとしてスマートウォッチの必要性を考えさせられるのです」

「私たちのワイヤレスイヤホンでは、スマートフォンをカバンの中やポケットに入れたままでもオーディオ操作を可能にします。通勤中にスマートホンを取り出して操作する必要がないため、うっかり落として画面を割ってしまうリスクもありませんし、背中を丸めてスマートフォンに集中してしまうこともありません」。Jason氏は、スマートフォンの使用時間を減らすことによる健康上のメリットがあると強調します。「先日タイに行ってきました。そこでは、歩きながら下を向いていると、背骨にどれだけの負担がかかるかをタイのスマートフォンユーザーに警告する地下鉄の広告がありました。アメリカやイギリスでは、健康上の観点からすでに常識になっていると思います」。

Woman tapping her Mobvoi watch

音声コントロールの進化

音声コントロールに携わる者にとって、自動車との高い親和性は明らかです。Jason氏は、2017年に始まった Mobvoiと自動車大手Volkswagen(フォルクスワーゲン)社との提携を非常にポジティブなものと捉えています。これは多くの人に共有されています。「私たちは、Volkswagen社と自動車の音声コントロール分野のパートナーとして提携しています。今年初め、私たちの音声技術を搭載したVolkswagen社との合弁会社が新しい電気自動車を発売しました。そしてMobvoiは今後、中国市場のフォルクスワーゲンのすべての車に搭載されることになると思います」
 

真のグローバルブランドを目指して

DHLは、Mobvoi製品を消費者に届ける上での重要なパートナーです。では、消費者がこのブランドを購入する際に、最も効果的な方法は何でしょうか?「Amazonは素晴らしいと思います。最初は単なるベンダーとしてそこからスタートしましたが、Amazonの各種プロモーションを利用するようになりました。TicWatch ProをAmazonで独占的に発売することもできました。いまでは Mobvoi はグローバル企業です。本社は北京にあり、シアトルとサンフランシスコにもオフィスを構え、世界30か国以上の小売パートナーに向けて製品を出荷しています。私たちは中国で最も国際的なAIベンダーであり、同時に、最も顧客重視のベンダーでもあります。グローバルであることは、私たちにっとていわば当社の生命線です」

Woman with Mobvoi watch holding mug

デバイスではなく、人とのコミュニケーションを

Mobvoiは特別な日と場所だけで使われるためのブランドではありません。朝、目覚めたその瞬間から眠りにつく瞬間までの間、ユーザーの一日を支えるパートナーになりたいと考えています。「私たちは、毎日のパートナー、フィットネスパートナー、そしてユーザーと人とを結ぶ、頼れるパートナーになれることを目指しています。イヤホンは、通勤時や外出時に活躍します。スマートホームスピーカー(モバイル版やこど子供向け)は家で使用するだけでなく、持ち運ぶこと可能です」。